2月4日、宇宙投資の会は第11回勉強会を行った。5年前に設立した頃に比べて、宇宙産業のスタートアップが上場するケースが相次いでいる。そこでここ数年で上場した2社に来ていただき、その成長ストーリーについて議論を行った。
衛星データをよりリアルタイムに
まずは各社の取り組みについて聞いた。
アクセルスペースは、自社が持つ衛星が撮影したデータを提供している。既に上場しているSynspectiveやQPS研究所などのSAR衛星事業者との違いは可視光や近赤外などの光学写真だという点だ。SARのデータに比べ利用はしやすいが、撮影は天候に左右される。一方消費電力はSARと比べて少なく、1機当たりが撮影できる量が多い。
5機の衛星を保有し直近の売上は約3億円。1/3の顧客は海外だということだ。半分が民間からの受注で、地域によっては直接データを提供するだけでなく代理店を経由することもある。事例としては、農業分野の顧客向けに、植物の特定の波長を撮り、植生について生育状況を分析することで効率化や売上の向上に貢献している。
新しい顧客セグメントとして「宇宙状況把握」というものがある。通常、人工衛星のカメラは地球の方を向いているが、それを宇宙空間に向けて、宇宙空間を漂っている物体を撮影をするサービスだ。デブリ監視等の問題からニーズが高まってきているそうだ。
宇宙事業における衛星データサービスの市場規模は現在50億ドルぐらいで、2033年までには80億ドルぐらいになると見られているが、当面は安全保障分野のニーズが多いようだ。ただ防衛以外も今後伸びていくだろうと会社は考えており、最近の案件では不動産の登記情報の効率化のPOCなどもあるとのことだ。そうしたニーズにこたえるため、2026年には追加で7機の衛星を打ち上げる予定だ。
AIを用いて衛星画像の分析を高度化
次にリッジアイは、宇宙専業というより、AI事業に取り組む会社だ。現在売上26億円、営業利益2.8億円。社員数はAI事業で50名ほど、グループでは90名もの人数となっている。DX、AIを使った業務変革のニーズに対応し、AIとデータの使い方をコンサルテーションし、それをもとにした開発を行っている。顧客には大手が多く、事例では、ごみ焼却炉の完全自動運転化や、国交省における地図更新業務の大幅な自動化などがある。AI利用の戦略策定、システム設計、開発・運用保守まで一貫して顧客をサポートする。
2018年から人工衛星データのAI解析をはじめ、国土交通省や経産省、防衛関係の企業との取引もある。
宇宙分野への参入のきっかけは、2018年時点で世界市場が2兆円規模であるのに対して、日本はまだ200億円しかなかったことや、安全保障というキーワードが注目を浴びつつあることがあった。多数の衛星で構成されるコンステレーションから得られる大量の情報の解析や、安全保障や防災での24/365での監視分析ニーズはAIと親和性が高く、商機があると考えた。また、ユーザー視点に立って、衛星データだけで課題を解こうとせず、ドローンや空撮データなども含めた最適な利用環境というものを提供していこうと考えている。
当社の技術の適用対象としては、衛星データを基に物体検出AIを使って何百台の車があるかを検出することや、土砂の変化を検知するAIによって土砂崩れを特定すること、森林伐採とソーラーパネルの検出を組み合わせて不法設置による土砂災害リスクの高い場所を抽出することなどがある。また、生成AIを活用し、入力したキーワードにあわせて適切な衛星データを取り出したり、分析したりする検索システムも開発している。
事業成長の見込みとしては、衛星事業も含めて年成長率30%を基本としながら、M&Aも含めた非線形の成長も目指していきたいとのことだ。
市場はいかに拡大するのか
参加者は、衛星データの利用が広がっていること、またAIを用いることで分析や利用のし易さも向上していることを理解できた。しかし、市場拡大のペースが、必要な衛星打ち上げのコストに照らしてどうなのかという点が議論になった。
最初の質問者による「収益は伸びてきているとして、防衛関連が多く、民間利用はまだ難しいということか。さらなる利用の拡大の可能性があれば教えて欲しい」との質問に対して、アクセルスペースは「確かに民間利用は安全保障用途と比べるとまだまだ規模は小さい。明らかに需要が見えている防衛に力を注いでしまう会社もある。民間で広げるための用途開発を細かく実施していかないといけないと思っている」と回答した。また、リッジアイは「民間利用の拡大はまだかなり厳しい。大企業が宇宙関連事業に乗り出そうとするものの、すぐクローズするケースを見てきた。理由は3つあると思っていて、1つ目は衛星データを使える人を育てるのに時間がかかること、2つ目は画像データがまだ高額で現地行ったほうが安いということ、3つ目はデータの更新頻度が少ないことだ。やはり頻度を増やして、そのコストを安くすることができないと状況は解決できないと思っている。全てのニーズに対応するのは不可能なので、広域で見たい、人が入れないところを撮りたいというニーズから先に満たすことが必要だ」と述べた。
次の質問者からは「ニーズだが、これも防衛に近いが災害のほうはどうか。ディザスターファイナンスへの取り組みについて議論はされていないのか」との質問がされた。
これに対してアクセルスペースは「ディザスターファイナンスについてはまだ事例がないが社内でディスカッションをしている。データ単発で売るのは難しく、なんらかの仕組みが必要だと思っている」と回答した。また、リッジアイからは「保険会社、特に損害保険会社からの問い合わせは多く関心は高いが、なかなか先に進まない。その理由として、発災前の話と発災後の分析業務があり、後者は衛星とは相性が悪く、かなりミクロな単位で見なければいけないので、ドローンの方が向いている。災害前については、保険会社単独では難しく、たとえば監査と絡めるなどの座組みが必要。一定規模の開発では事前の衛星解析を必須とするなど、公的機関を巻き込むのはありかもしれない。」との答えがあった。また、具体的な事例としては「大きなダムとか工場設立時の事前調査で話がきたことがある」とのことだった。
続いて、何かオールジャパンでデータを互いに集め全域をカバーするデータプラットフォームになることはできないのかであったり、安全保障に関心が高まっている中で国内企業にチャンスがあるかという質問があり、後者はすでに実績があるとのことだった。結論としては、やはり今は防衛関連のニーズが高く、それがこういった国内のスタートアップの会社を支えているようだ。
将来への考え方
最後に2社の方から投資家に質問はないかと司会が問うと、「私たちは企業価値を上げたい、そのために投資家の意見を知りたい、という気持ちが基本にある。こうした場で、投資家の方々から、それぞれの投資軸を共有いただけると、コミュニケーションをしやすく、また勉強になる」との答えがあり、参加者から「たとえば、インターネットの世界で、最初は国家主導でやって、民間に転用され、インフラが低価格で提供されるようになり、いろんなサービスが生まれたけれど、最後そのマーケット全部持っていったのが、GoogleとかAmazonとかMetaだった。そう考えると、宇宙でもインフラの低価格化が進展したその先に全く違うプレイヤーがマーケットを取ることもありえる。こうしたレベルの中長期の成長戦略を示してほしい」、「やはり初期投資を担うのは防衛産業なのかもしれないが、早くそれらの基盤の上に民間向けのサービスを確立し、その後も自社しかできない衛星データビジネスを展開して欲しい。」
といった意見交換がなされた。
